AIレシピ論 P3 2026‑03‑09

素材を見ないレシピ本

― 野須寅 堕無洲|AIレシピ論・第3章

🗣️ 常連客が持ってきた話

少しばかり前の話だ。

いつもの常連が
スマホ見せながら俺に言うんだ。

「AIが面白い料理教えてくれたぞ」

画面を覗くと、たしかに立派なレシピだった。

なかなかおもしれーじゃないか。

手順も工程もわかりやすく、きれいに並んでる。
調味料も細かく書いてある。

なるほど。
確かによく出来てる。見栄えとしてはな…

だがな。

俺はそこで
一つだけ聞いた。

「その魚、触ったことあんのか?」

🐟 料理は素材を感じてから始まる

料理ってのはな。

レシピから始まる仕事じゃない。

素材を感じてから始まる仕事だ。

仮に魚を扱う人間だったら
誰でも知ってる。

同じ魚でも
毎回状態が違う。

— 毎回違う素材の状態 —

目の状態

脂の乗り

身の締まり

獲れた海域

匂い

水分

血の残り方

全部違う。

だから料理人は

魚を見る。

触る。

そして感じる。

包丁を入れる前に
もう半分判断してる。

例えばな。

同じ鯖でも

今日は刺身がいいか

それとも焼いた方がいいか

触れば分かる。

匂いでも分かる。

包丁の入り方でも分かる。

その時々の状態で判断する。

⚠️ AIはそれが分からない

ところがAIは

それが分からない。

魚を見ない。

触らない。

匂いも嗅がない。

つまり

素材の状態を知らない。

⚡ リアルタイム判断

料理人は
いつもリアルタイムで判断してる。

?

塩はどれくらいか

?

火はどれくらいか

?

何分焼くか

それは

レシピ通りじゃない。

素材の状態や加減を見て決める。

ところがAIのレシピは

素材が

常に同じ状態

だと仮定している。

理想の材料。

理想の分量。

理想の火加減。

だがな。正直…理想論を並べられてもな。

現場の料理は
そんな世界じゃない。

🗺️ レシピは地図だ

だから俺は思うんだ。

AIのレシピは
確かに立派だ。

だが

料理ではない。

レシピってのは

料理の

地図みたいなもんだ。

だが

地図を持ってるだけじゃ

海には出られない。

港町界隈で言わせてもらうなら

すなわちこういうことだ。

漁に出ない奴が

魚の話をしてる。

まあいい。

AIは否定しない。

レシピ帳としては
かなり優秀だ。

だがな。

料理ってのは

素材を見る仕事だ。

最後にAIに
一つだけ聞いてみたい。

「お前…魚、触ったことあんのか?」